〜AN/ALE-55 FOTD〜
FOTDとはFiber-Optic Towed Decoyの略称で、日本語に直訳すると「光ファイバー曳航式の囮」となります。もっと普通の言い方をすれば光ファイバー曳航式デコイもしくはファイバーオプティック曳航式デコイとなるのでしょうか。
AN/ALE-55FOTDの機能を簡単に言ってしまえばチャフと同様、レーダー誘導ミサイルの回避に用いられるECMの一種で、F-15Eから伸びるワイヤーに牽引されてミサイルを引き寄せる効果を持ちます。通常は機内の曳航式デコイディスペンサー内に収納され必要に応じて放出し牽引します。但し、放出後にワイヤーを巻き取り回収する事はできません。人間の腕ぐらいの大きさです。
FOTDは戦術電子戦システム(TEWS)に総括された電子戦システムの一つであり、ミサイルや敵機等、自機をロックオンしようと目論む脅威のレーダー電波をAN/ALR-56レーダー警戒受信機(RWR)が受信し、受信したレーダー波の周波数やパルス反復の頻度をデジタル信号に変換、機内のTEWSより光ファイバーを通じ、ワイヤーの先端のアンテナへ信号を送信し、電波として機外へ放出されます。
レーダーは電波を照射し、その反射波から位置や速度を特定するわけですから、後方に偽の反射波を作りだす事により、自らを本来のサイズより大きく見せかけて誤認させる事ができます。
光の周波数が高い(波長の短い)可視光線の場合は前方の戦闘機と後方の曳航式デコイを容易に見分けることが出来ますが、るギガヘルツ〜メガヘルツの光の周波、波長の長い、いわゆる電波では細かなものが「見えない」ためぼんやりとした一つの大きな塊にしか見えません。
通常、レーダー反射波の中心点にミサイルは誘導されるため、反射波の中心を後方にそらしミサイルの直撃を防ぐ役割を担い、生存性を大きく向上させます。
2003年より海軍の空中戦センター航空機部門(NAWCAD)により有効性/実証性試験が開始されます。おそらくF/A-18E/Fが一番最初にFOTDを装備することになるのではないでしょうか。
今後の曳航式デコイは、より高い周波の光、いわゆる赤外線の照射を行う能力も後々に付随されると言われ、現時点では認知度が低い曳航式デコイですがチャフやフレアのように全ての戦闘機や爆撃機に標準装備される見込みです(チャフやフレアに代替するものでは有りません)。
(この写真はF/A-18のAN/ALE-50曳航式デコイ。牽引イメージです。)