AN/APG-70
対空レーダーモード
空対空レーダーモードではF-15Cに搭載されているAPG-63レーダーと同等の能力を発揮し、走査範囲は最大160海里のボアサイト60度(左右60度120度の扇状)、エレベーション6バー(上下3段階)スキャンが可能であり、同時に24目標の探知が可能です。
Jane's F-15のゲーム画面
■RWSモード
RWSは「Range While Search」の略称で「範囲捜索」の意味があり、広範囲を走査するのに向いており、通常はこのモードが使用されます。
APG-70は、パルスドップラーレーダーであることからPRF(Pulse Repetition Frequencyパルス反復周波数)を変えることにより探知が可能となる目標が異なります。
PRFを高くすると、高速で飛行(高接近率)する目標の探知に適しますが、低速で飛行する(低接近率)目標の探知が難しくなる副作用が生じます。また、PRFを低くすると、低速で飛行する目標の探知に適しますが、高速・遠距離目標の探知が難しくなり、ノイズが混じりやすくなるので、PRFを高くするか低くするかは臨機応変に対応します。しかし通常はInterleaved RWS(IRWS)モードにより自動的に高PRF/低PRF操作を繰り返して行われます。
「後ろのヤツ」がレーダーカーソルを目標に合わせてロック・オンするとSTTモードへと移行します。
■RGHモード
Range Gated Highの略称
中PRF走査によって行われるレーダーモードで、高・低接近率どちらの航空機にも対応する事ができ、目標をすばやく探知する事が可能。
■VSモード
Velocity Search・速度捜索の略称。
このレーダーモードは他と異なり目標の場所を示すのではありません。
レーダーディスプレイの縦軸は速度単位になり、目標の接近速度が80-2400ktで表示されます。
某パイロット曰く「使い道がわからない、冗談で存在するとしか思えない」
■VCTRモード
Vector・針路の略。このモードは広範囲を探査するのに倍の時間がかかります。が、RCS・レーダー反射率の低い目標をより遠距離で探知することができます。ただし、走査スピードが通常の半分以下になり広範囲を走査するには不適といえます。
RCSが低いというのは、真正面を向いている航空機や、ステルス性のある航空機のことです。
ちなみに強力なAPG-70レーダーVCTRモードの力をもってしても、F-117ステルスを探知することは困難です。
■STTモード
STTとはSingle Target Tracking・単一目標追跡の略称で、その名の通りに範囲の走査は行われず、単一の目標のみを追跡します。これをいわゆる「ロックオン」と呼びます。
レーダーアンテナが目標に固定され重点的に追尾するため、目標の1kt単位の速度や方位、高度といった情報がリアルタイムにもたらされ、攻撃段階に移ることができます。次の瞬間「FOX3!」とコールすれば数秒後には遠くの空に炸裂が走ることでしょう。
■TWSモード
Tracking While Scanの略称で「追尾走査」の意味を持ちます。
このレーダーモードは特殊で、複数の目標を追尾しつつ捜索が行える極めて優れた機能です。よく、トムキャットの説明などで「24目標を探知し6目標を同時攻撃可能」というフレーズを耳にしますが、それはTWSモードを使用します。
F-15EストライクイーグルのAPG-70レーダーは1機の主要目標と7機の副次目標と、計8機を同時に追尾(ロックオン)することが可能。それと同時にその他の目標の探査も行われる恐ろしい能力を誇ります。
この8機をロックオンした状態でAIM-120を発射すると最初の一発目は主要目標に向かって誘導し、二発目以降は副次目標のうち近い順に誘導されます。理論的において8機を同時に撃墜することができます。
ただし、1機を追尾するSTTと比較すると追尾性能が劣り、追尾を行わないRWSと比較すると捜査範囲に劣ってしまいます。
なおAN/APG-63(v)2フェイズドアレイレーダーを搭載する一部のF-15はTWSモードの性能が飛躍的に向上しています。
■ACMモード
もし、近距離にまで接近されドッグファイトを余儀なくされた場合、レーダーの操作を逐次行うことは不可能です。。ACMモードはそのような場合に役立つわけです。
レーダーの捜査範囲を狭くして、真正面に来た目標に対して自動的にロックオンをかけSTTモードに移行します。ACMモードには複数のサブモードが存在します。機種を中心に円錐状に探知するモードや、エレベーションスキャンを増やし、アジマス幅を狭め、ほとんどレーダーアンテナを縦の首振りにし上下捜査範囲を広げたモード等、状況に合わせて選択します。