〜地形追随飛行〜
地形追随飛行(NOE)
地球が球体であることを利用し、水平線の下に隠れて防空レーダーに探知されないようにする戦術を地形追随飛行と呼びます。マッハ0.9の戦闘機が地表数十〜数百メートルを飛行するのだから並大抵の技ではありません。もし、少しでも操縦桿を深く倒してしまったら…その瞬間地球と合体してしまうことになるでしょう。
F-15Eは、非常に危険で難しい地形追随飛行を昼夜問わず全自動で行なえるオートパイロットモードを備えています。これもAPG-70レーダーの優れた性能の一つといえます。
電波高度計により自機と地面の差いわゆる対地高度を計測し、APG-70レーダーの地形追随レーダーモードで前方の地面の高度を計測します。それらをコンピューターが処理し地面に沿った操縦を自動で行なってくれます。しかし切り立った崖など急激な高度差には自動操縦では対応しきれませんのでその際は警告音を出しパイロットに知らせます。実は「完全手放し操縦システム」とは言うものの現在のところ完璧な地形追随自動操縦装置は開発されておりません。
残念ながらF-15Eには構造上、地形追随飛行に弱点も持ち合わせています。
F-15Eは、同じように低空を侵攻し攻撃を加える事が可能なF-111やトーネードに比べて非常に翼面荷重が小さく、空気密度の高い低空を高速で飛行すると振動が発生し、また乱気流の影響も大きく受けます。兵装システム士官はひどい揺れの中で作業しなければなりません。低空侵攻能力ではF-111や、ヨーロッパのトーネードの方が上かもしれません。
が、たしかにF-111やトーネードのような翼の小さい可変翼のほうがスムーズ、かつ高速に飛べるでしょう。しかしそれをF-15Eの弱点とするのは間違っていることは実戦が全て語っています。低空飛行による振動が原因で任務に失敗した等と言う話は皆無です。
余談ですが、とあるパイロットは「地形追随飛行は夜中の真っ暗な方がやりやすいのさ、自動操縦装置を信じ、あとはLANTIRN画面を見ているだけで良い。真っ昼間だと周りの地形に目を奪われて、逆に手間がかかる。」と言います。
なお、地形追随飛行は対空レーダーに捕らえられなくなる代わりに地上の小火器からの攻撃に非常に弱くなります(ただし被射撃時間は減少する)。F-15Eの話ではありませんがベトナム戦争では低空飛行を行う米軍戦闘機に対してAK小銃で射撃し撃墜した少女部隊も実在しました。