〜パイロットと兵装システム士官〜

WOMAN PILOT


パイロットとWSO(兵装システム士官)
コンピューターの発達により従来のわずらわしい操作が自動化されたおかげで、単座のF-16CやF/A-18は対空戦闘から地上攻撃まで万能にこなせる名機であるのに対し、F-15Eは前後にパイロットと兵装システム士官(以下WSO)が搭乗するタンデム複座型の戦闘爆撃機です。
これらの新型機と比較してもF-15Eはアヴィオニクスにおいて何ら劣るということはありません。それならば何故複座機なのでしょうか。
CREW
それは従来のF-15戦闘機開発時代からのコンセプト「例えどのような場合でも敵を打ち負かす妥協なき能力」に由来します。いくら自動化された戦闘機とは言え、パイロット一人が機を操縦しつつ、レーダーや兵装操作、航法といった作業をこなすのは非常に困難です。さらに地形追随飛行を行なっていたらパイロットはこなさなければならない仕事に忙殺されてします。事実湾岸戦争では単座戦闘機パイロットの負担が問題になりました。

そして目標を破壊したかどうかは偵察機を飛ばしてBDA(損害効果判定)を確認しなければなりません(偵察衛星という手段もありますが)。もし爆撃に失敗すればその後にまた戦闘機で空爆を仕掛けて戦果確認のため偵察機を飛ばす事となります。無駄に出撃すればそれだけ費用がかかりますし、なによりも被弾する可能性が大きくなります。
過去、偵察機が待ち伏せに合い撃墜された事が何度となく有りました。防御側は知っているのです。攻撃の後には必ず偵察機が飛来してくるという事を……出来る限り少ない出撃(つまり1回)で確実に破壊したほうが効率的であることは当然であります。そのためにより高い成功率を実現するためにパイロット以外にもWSOが搭乗しているのです

F-15Eでは、前部のパイロットが主に機の操縦と兵装の発射を行ない、後部のWSOはレーダーやその他計器の操作を行ないます。作業分担する事により作業を迅速に行なえるので、より確実に目標を補足・破壊する事ができます。F-16やF/A-18のような単座戦闘機ですら強力なのに複座のストライクイーグルは更なる攻撃力アップを実現しているのです。

また、どちらか一方が敵機を発見し対空戦闘モードをONにすればHUDやMFDに映し出されている情報が一瞬にして空戦に必要なデータに変わり、前後座席のMFDはリンクしているので「敵機発見!」と知らされてから自分の座席のMFD表示をいちいち変える手間がありません。

しかし二人羽織でも、対空ミサイルを発射していれば良い同僚達に比べてこのストライクイーグルは非常に手ごわく、F-15Eのクルーに課せられる年間飛行時間は320時間に及びます。自衛隊戦闘機パイロットが年間180-160時間程度であるのに比べて2倍近い数値です。さらにF-15Eに乗り始めて日が浅い者には一ヶ月に20時間の追加飛行訓練が課せられるのです!!これは他のマルチロールファイターと比べてもかなり多い時間です。すでに他機で実績の有るベテランパイロットですらこれらの訓練に変わりはありません。長距離侵攻という性格上どうしても長時間の訓練が必要となるのです。


しかし、副座にも大きな弱点があります。それは人件費が高くなること。パイロットとWSOこと兵装システム仕官が搭乗するということは単純計算で倍。(実際はその他訓練費などで倍どころではすまなくなりますが)東西冷戦が終結し、脅威が弱まりこの軍縮の世の中です。「人件費が倍の複座戦闘機などもってのほか!」という複座戦闘機不要論が出てもおかしくありません。「単座戦闘機で十分なのではないか?」というのが彼らの言い分です。
全くそのとおりなのかもしれません。しかし複座戦闘機を廃止してしまうのは、米軍が半世紀以上培った後部搭乗員の知識を流出させてしまう結果になります。一度失われた知識はそう簡単には戻りません。いえ、失われた文明のように2度と戻らないかもしれません。

そして、いくら自動化が進んでもプログラムされた事のみしか出来ないコンピューターは生きて帰りたいなどとは考えないし、突発的な事態への対処は人間の脳には到底及びません。



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